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2026.05.22

スカートとODD Foot Works 「FANCLUB」オフィシャルインタビューを公開!

拝啓、奇跡みたいな、すべての偏愛へ。

 

スカートとODD Foot Works。このコラボレーションは、『霧尾ファンクラブ』の原作者である地球のお魚ぽんちゃん先生が両者のファンであることから始まった。そしてアニメ化される『霧尾ファンクラブ』のオープニングテーマを、スカートとODD Foot Worksに作ってもらいたいと夢見ていたという。

原作は、女子高生の三好藍美と染谷波が、クラスメイト・霧尾賢への一方通行の想いをぶつけ合う、学園モノ偏愛コメディだ。ギャグの密度は高く、藍美と波の妄想がとめどなく暴走する。しかし巻を重ねるごとに、各キャラクターが抱える感情の多層構造が浮かび上がってくる。
霧尾自身もトラウマを内側に持ち、全員が誰かを好きで、誰にも届かない。笑いの裏に、真顔の切実さがある。純然たるラブストーリーにはたどりつけそうにないという宙ぶらりんの純度こそが、この作品の核心だ。それを思うと、地球のお魚ぽんちゃん先生の頭にスカートとODD Foot Worksという、一見交わらなさそうな、でも交わったら確実に強烈な化学反応が起きそうな2組が浮かんだこと自体に、不思議な納得感を覚える。

スカート・澤部渡のODD Foot Worksへの印象は、世代感の相違を覚えるものだったという。

「ODD Foot Worksはデスクトップがギターやドラムの代わりになった世代。
いろんなものが混ざり合った、僕の世代だとギリギリできない音楽性だなと思って見ていました」(澤部)

一方、ODD Foot Works側にとってのスカートの印象は、有元キイチの言葉が簡潔で鋭い。

「ポップソングとして普遍的でいい曲なんだけど、ちょっとやっぱり聴いたことのない感触がある。
本当に感動するってことは、新しいってことじゃないですか。スカートの曲にはそういう印象がありました」(有元キイチ)

双方のポップ観もまた異なる。スカート・澤部渡が紡ぐのは、メロディの普遍性と微細な陰影をつぶさに捉えるバンドサウンド主体のポップ。
ODD Foot Worksが体現するのは、ヒップホップとDTMを軸にしたミックスカルチャーとしてのポップ。
世代も制作手法も、そしてポップに対するスタンスの温度差も、ほとんど別々の文脈から来た2組が、『霧尾ファンクラブ』という旗のもとに1曲のポップソングを完成させるために出会った。
そして、両者の音楽に対する偏愛の向き先が違うからこそ、混ざった時に誰も予測できない1曲が生まれたというわけだ。

互いの『霧尾ファンクラブ』への向き合い方は、こうだ。

「原作を読み進めるうちに、『あ、これはテンションが高いだけのラブコメじゃない』って気づいたんです。
突き抜けたアッパーさの裏に潜んでいる要素があって、キャラクターそれぞれが何層にもなった感情を持っている。
でも、バカバカしさも常にある。それが漫画好きの自分としても珍しい体験でした。
藍美と波、あの2人の関係性に、どこかで自分を見たような気もしますね。何か言ったら『うん』って返してくれる友だちって大事じゃないですか。
くだらないことを丸ごと拾って返してくれる友だちのありがたさみたいなところに、高校生のころを思い出しましたね」(澤部)

「原作を全巻読んで、ギャグだけじゃないんだなって思いました。人間の心理って、もっと裏があるということを描いていて。
それって自分が音楽で一番好きな部分と通じるところで。そういうところと近い場所にある漫画なんだなと思いましたね」(有元)

「バカみたいなことをわざわざ本気でやるし、真面目なことをふざけて言う。
表向きの見せ方と伝えたいものの差異というか、その温度感が面白いなと思いました」(榎元)

「原作を読んでいて、藍美と波が俺の学生時代の記憶に入ってきたんですよ。
どこの学校のどこのクラスにも、ずっと2人でいる女子って、いるでしょ? 今も全国にあの2人はいると思います」(Pecori)

楽曲制作の起点になったのは、スカートとPUNPEEによるコラボ楽曲「ODDTAXI」という前例だった。
2021年放送のアニメ『オッドタクシー』のオープニングテーマとして、書き下ろされた楽曲だ。
劇中で展開される41歳のタクシー運転手をめぐるミステリーに寄り添うように澤部の歌とPUNPEEのラップが溶け合う「ODDTAXI」は、スカートとヒップホップの間にメロウな橋をかけた1曲だったとも言える。
『霧尾ファンクラブ』のオープニングテーマの依頼が来た時、澤部の念頭にあったのは自身の音楽性との距離感でもあった。

「『ODDTAXI』はメロウな曲で、それは僕の出自でもある。
でも、『霧尾ファンクラブ』は絶対にアッパーじゃないといけない部分があるなと思ったんです。
そうなった時にスカートに絶対に足りないのは、アッパーの成分なので。
でも、ODD Foot Worksとのコラボ曲ということであれば、彼らの音楽性は自分じゃ出せないブーストがかかったアッパーな要素を持っているだろうから、そこはもうお任せできそうだな、と」(澤部)

澤部が最初に提出したのは、ギターと歌詞なき声だけの89秒の弾き語りデモだった。
『霧尾ファンクラブ』のアッパーな表層とその裏の多層性を、1本の歪んだギターと叙情的なサビメロで同時に落とし込もうとした痕跡がある。

デモを受け取ったODD Foot Worksは、まずビートメイクから入った。
榎元がジャージークラブやドラムンベース系のビートを極端な形で貼り付け、有元が整理・再構成した。

「スカートとのコラボ曲としてODD Foot Worksがいたからこうなった、という印象を残したかったので。
だから、とりあえずかなりインパクトの強いビートを貼ったという感じで。キイチに渡して戻った時には、自分が全然想像もしていなかった今の形のビートになっていました。
ベースを弾くうえでもビートの情報量が多いし、一歩間違えたらぐちゃぐちゃになってしまうので、細かいつなぎ目の役割を果たせるように意識しました」(榎元)

「エノキ(榎元)からもらったビートを再構築するうえで、エノキのビートはとにかく足が速い人の音楽というイメージがあって。
俺はもともと音楽的にも足が遅いので(笑)、速い人と遅い人の間にあるポケットを探れば、メロディもフックするんじゃないかと思いながら仕上げた記憶があります」(有元)

「情報量は多いし、とっ散らかってもいるんだけど、気が散らないという面白いビートだなと。トラックを聴いた瞬間に『面白い!』と思いましたね」(澤部)

Pecoriが「ビッグビート」と形容するそれは、90年代的ではなく、パーカッシヴに躍動する現行のビートミュージックを昇華した、性急で混沌とした開放感に富んでいる。そして、そのビートの上で性急に曲のドラマを動かすラップを乗せるうえでPecoriが意識したことは、こうだ。

「『霧尾ファンクラブ』における藍美と波、霧尾くんの関係性を浮かべつつ──去年、ODD Foot Worksは『オドの森』というファンクラブを開設したんですけど──ODD Foot Worksとリスナーとの関係値もそこに照らし合わすみたいなイメージがあって。最終的には、みんなが自分を愛せなかったら何も始まらないという切り口が、俺の中にテーマとしてありましたね」(Pecori)

澤部の歌唱とPecoriのラップを接続する有元パートの歌もまた、切なさを覚えたまま高揚していく聴き応えがある。

「Pecoriが低いキーでラップを、澤部さんが高いキーで歌うことを想像していたので、その中間の橋渡しになれたらいいなと思うメロディになるように意識しました」(有元)

そして、サビは澤部のメロディメイカーぶりであり、リリシストとしての真摯なロマンティシズムが光る。
落ちサビの〈世界はここにしかないんだ 二人の気持ちに名前はまだない〉というフレーズがあるからこそ、サビの〈世界を変えながら 変わらないために 愉快な名前をつけよう「ファンクラブ」〉というこの曲の核心を語るサビが強く呼応する。
名前を与えることで、初めて〈二人の気持ち〉が輪郭を持つ。

「たしかサビの歌詞は、Pecoriくんのラップと有元くんのメロディが入ったデモをもらった状態で書いたんですけど、僕に与えられたのはサビの8小節なんで、短いからこそ歌詞はかなり苦戦しました。
言いすぎてもダメだな、という。アニメの制作サイドからなるべくこのワードは使わないでほしいというリストがあったんですけど、そのリストもあえて見ずに自分なりに原作を読み込んで書きました。
『霧尾ファンクラブ』の核心が凝縮されている? ああ、そう思っていただけるなら、本当にうれしいです」(澤部)

さらに、もうひとつトピックを加えると、冒頭から印象的に登場する、どこかチアソングを彷彿させるコーラスにはスタジオ見学に来た地球のお魚ぽんちゃん先生も急遽参加している。

「コーラスに先生の声が入ったことで、藍美と波の姿が思い浮かべやすくなったと思います」(榎元)

あらためて4人は今回のコラボレーションと、完全独自のポップソングに仕上がった「FANCLUB」についてこのように語る。

「曲のなかで想像してなかったことがしっかり起きていて、でもちゃんとポップソングとしていい曲という感覚もあって、すごく気に入ってます。
正直、まだどこかで僕自身もリスナー気分でいるかもしれない。アニメの回が進んでいくごとに自分のこの曲に対する感触がどう変化していくのかも楽しみです」
(澤部)

「こんなにちゃんとまとまるんだ、って安心しました(笑)。
澤部さんが細部にこだわってくれたところもうれしかったし、澤部さんとの制作が本当にいい経験になりました」(榎元)

「エノキも言うように、レコーディングの段階でここまで細かく詰める姿勢が大事なんだなと澤部さんから学びました。
今自分が取り組んでいるソロやODDの楽曲制作においても意識したいです。この曲で『霧尾ファンクラブ』が盛り上がってくれたら、うれしいです」(有元)

「俺も澤部さんと一緒で、めっちゃ手応えはあるんですけど、まだリスナー気分というか。それこそ、この曲に対する感覚にまだ名前がついてない感じ。
いつか澤部さんと一緒にライブで披露する機会もあるだろうし、これからどんどん聴こえ方が変化していく曲だと思うので。すごく楽しみです」(Pecori)

スカートとODD Foot Worksが持つ音楽に対する偏愛が出会い、衝突し、共鳴したことで、誰も予測できなかったフックだらけのポップが鳴った。
だからこそ、この曲は、リスナーの数だけある、まるで奇跡みたいな、すべての偏愛に向かって響いている。

インタビュー&テキスト=三宅正一


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